小川瑛次郎「チームを勝たせる選手になる」
羽黒(山形県)
羽黒(山形県)のエースである小川瑛次郎選手は、「U18日清食品 東北ブロックリーグ2023」で最も高い注目を集めた選手と言えるでしょう。6月にFIBA U19ワールドカップ2023に出場し、8月末には3人制の男子U18日本代表としてもFIBA 3×3 U18ワールドカップ2023を戦ったスター候補で、出場チームの関係者や選手からは「小川くんと対戦するのが楽しみ」という声が多数聞こえました。
ところが、小川選手はこの大会で本来の力を発揮するには至りませんでした。8月中は日本代表の活動などでチームの練習にほとんど参加できず、連戦の疲労を十分にリカバリーできていないことが、その大きな要因です。最終戦の福島東稜戦(福島県)の敗戦後、チームメートから少し離れた場所で座り込んだ小川選手は「言い訳になってしまうかもしれないけれど、(FIBA 3×3 U18ワールドカップ2023が行われた)ハンガリーから帰ってきたばかりで体力的にキツいところがあるし、羽黒らしさを少し忘れているところがあります」と悔しそうに振り返りました。
秋田市立城南中時代はセンターだった小川選手は、羽黒でポジションアップに着手し、高校3年生になった現在はガード、フォワード、センターとどのポジションでもプレーできるスキルを備えたオールラウンダーに成長しました。
今大会は本調子でなかったとはいえ、3ポイントシュートやパス、1対1など様々なプレーで見せた存在感は、やはり抜きん出ています。身体の幅やテクニック、フロアビジョンで相手を出し抜く総合力の高いプレースタイルは、先日のFIBAバスケットボールワールドカップ2023で日本中を魅了したルカ・ドンチッチ(スロベニア代表)を彷彿とさせるものがあり、本人も「高校に入ってよく言われるようになりましたし、プレーを見る機会も増えました」と、ドンチッチを意識していることを明かします。
延長戦にまでもつれた県立能代科学技術(秋田県)との試合では、タイムアウト時にコーチにかけられた「最後はお前だよ」という言葉に発奮し、106-103の激戦を制する立役者になりました。6月の東北大会のリベンジを期した福島東稜戦は、相手センターの想定外の身体能力にアジャストができず、第4クォーター中盤に4ファウルになりながらも、タイムアップまでファウルアウトすることなくコートに立ち、ファイトし続けました。
この大会で学んだことを問うと、小川選手は「チームを勝たせる選手になることの大切さ」と答えました。「チームを勝たせる選手かと言えば、まだまだそうではありませんが、苦しい場面で自分が点を取ったり声を出してリーダーシップを発揮できるようになりたいです」
羽黒の機動力あるバスケットへの再アジャストやフィジカルのさらなる強化など、これからやるべきことはたくさんあります。しかし、「U18日清食品 東北ブロックリーグ2023」で得た悔しさは小川選手の『エースの自覚』をあらためて呼び起こすことになりました。この経験は、これからの小川選手のステップアップの助けになるはずです。
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