吉田心と井本摩稀斗「1年生からの努力を見ている」
県立宇部工業(山口県)
県立宇部工業は昨年のウインターカップに10年ぶりの出場を果たし、今年のインターハイも17年ぶりに出場と勢いがあります。ただし全国の舞台ではいずれも初戦敗退。初出場となる「U18日清食品 中国ブロックリーグ2024」もすべての試合に勝つつもりで参加しましたが、結果は1勝3敗でした。それでも全国大会を数多く経験している強豪チームと渡り合い、県立松江東(島根県)には粘り強いディフェンスから後半に3ポイントシュートが当たっての逆転勝利を収め、大きな自信を得て大会を終えました。
キャプテンで司令塔の吉田心選手は「全員がしっかり走って、速い展開に持ち込むバスケットで全チームに勝つつもりだったのですが、各県の代表チームばかりでレベルが高く、目標は果たせませんでした。それでも自信を得られた部分もあるし、課題も分かったので、修正できるところはしっかり修正していきます」と大会を振り返ります。
守田智ヘッドコーチは「9月に松江で最初の2試合をした時にはまだインターハイから次へと意識が切り替わっておらず、チームとして模索しながらの戦いでしたが、この2試合はチームとして40分間どう戦うかも固まってきた中だったので、非常に良い経験をさせてもらいました」とチームの成長ぶりに手応えを感じています。
そんな県立宇部工業で、「U18日清食品 中国ブロックリーグ2024」の4試合を特別な思いでプレーした選手が井本摩稀斗選手です。これまで出場機会に恵まれませんでしたが、インターハイ終了後にスタメンの一人が就職のため部活を引退することになり、その代役としてスタメンに抜擢されたのです。昨年のウインターカップではメンバーには入ったものの出番なし。3年生になった今年も「それまでは平均プレータイムは4分ぐらいでした」という井本選手ですが、ようやく訪れたチャンスに勇躍しました。
吉田選手とバックコートでコンビを組む井本選手の仕事は、まずは前線で相手のハンドラーにプレッシャーを掛けること。強引にボールを奪いに行くというより、足を使ってボール運びに時間をかけさせ、チームディフェンスの網に追い込みます。攻めに転じればコーナーへと走ってチャンスを待ちます。チームで一番のシューターは西村遼介選手なので、井本選手に必ずボールが回って来るわけではありませんが、それでもいち早くコーナーに走ることでフロアを広げ、他の選手がシュートを打てば逆サイドからオフェンスリバウンドに飛び込むなど、常に何かを狙っています。
1年生から主力として試合に出ている吉田選手は、同じ学年の井本選手が3年間頑張る姿を見てきたと言います。「井本は寮で暮らしているんですけど、本当に毎日一番に来て、帰りも一番遅くまでシューティングしています。下級生の頃は先輩のシューティングを手伝ってから自分でシュートを打ったりして、良い時は連続で10本ぐらい決める力があります。1年生からの努力を見ているので、僕は井本には信頼してパスを出しています」
井本選手は165cmとサイズはありませんが、守備でも攻撃でも一番に走り出すための運動量を身に着け、3ポイントシュートの精度を磨きに磨いてきました。「自分の武器は3ポイントシュートです」と井本選手は言います。「試合に出たら決めるしかない。チャンスが来れば迷わずに打つ。それが自分の責任だと思っています」
10月20日、最終戦となった岡山商科大学附属(岡山県)戦には68-83で敗れましたが、井本選手は左右からのコーナースリーと、チームの攻めが手詰まりになり、時間がないところでのディープスリーと3本の3ポイントシュートを決め、2桁得点を記録しました。
出場機会が巡ってこなくても腐ることなく日々の努力を続けた井本選手にとって、「U18日清食品 中国ブロックリーグ2024」はブレイクの大会となりました。スタートメンバーとして試合に出て、仲間に信頼されて結果を出している今を「すごく楽しいです」と笑顔で語る井本選手を、隣の吉田選手もうれしそうに眺めていました。2人は「高校でバスケができるのもあと少しなので、一つでも多く勝って、チームに恩返し、先生や応援してくれる人たちに恩返ししたいです」と口を揃えました。
「U18日清食品ブロックリーグ2024」 会場での観戦情報
この記事をシェアする