二宮有志 「自分たちのスタイルを表現できれば戦える」
和歌山南陵(和歌山県)
和歌山南陵にとって、「U18日清食品 近畿ブロックリーグ2024」は様々なチャレンジが求められる大会となりました。11月22日に対戦した阪南大学(大阪府)、翌23日に対戦した洛南(京都府)との試合中、ベンチに座っていたのは、和中裕輔ヘッドコーチとアシスタントコーチの2人のみ。3年生の5人がコートに立つと、控え選手は誰もいません。消耗は激しく、ベンチに戻れば呼吸を整えるのがやっとで、つりそうな足をケアするのも順番待ち。それでも彼らは戦うことを止めず、むしろ会場を沸かせるプレーを随所に見せてくれました。
試合後、和中ヘッドコーチは「5人しかいない中で最後までこの大会を戦えたこと、最後まで投げ出さずに5人で自分たちのバスケを表現できたことを評価してあげたい」と、チームの健闘を称えました。
和歌山南陵は経営難で新規生徒の募集が停止され、生徒の転校も相次ぎました。それでも和中ヘッドコーチは、「選手がいる限り、ここで戦う」と覚悟を決めて指導にあたっています。夏のインターハイに続いてたった6人の選手で臨んだ「U18日清食品 近畿ブロックリーグ2024」では、3勝1敗と好スタートを切りました。そんな中、予想していなかったことが起こります。この大会期間中にゴール下を支えていた留学生のアリュー・イドリス・アブバカ選手が、進路の関係で母国に帰ることになったのです。
「状況が状況なだけに、選手たちがモチベーションを保つことは相当難しいと思っていました。でも、思った以上に彼らは肝が座っていました。私が何かする前に、選手たちが自ら考えて行動してくれています。そこは心強いし、信頼しています」と和中ヘッドコーチは言います。
キャプテンの二宮有志選手も状況をしっかりと受け入れて、前を向いています。「イドリスの帰国が決まった時は、正直やばいと思いました。ただ、決まったことは仕方ないですし、彼が悪いとは思っていません。しっかりと受け入れて、前を向いてやっていこうと5人で話し合いました。自分たちには『走らないバスケ』という明確なスタイルがあって、それを監督のアドバイスだったり、自分たちで意見を出し合って形にしています。自分たちのスタイルを表現できれば戦えるとコートで証明したいと思って、毎試合戦っています」
『走らないバスケ』は、5人で40分間を乗り切るための苦肉の策ではありますが、これは彼らが考えた勝つための最善の策でもあります。ディフェンスでハッスルしたり、ペースを上げることでの消耗を避け、その中で5人が連動して守り、攻めます。留学生の離脱もプラスへと意識を切り替え、「今まではイドリスを起点とした攻撃が多かったのですが、あらためて自分がやらないといけないと考えるようになりました」と二宮選手は覚悟を決めています。
その言葉通り、洛南戦では二宮選手がその高いスキルを生かしてペイントアタックを続け、プルアップやレイアップで得点を重ねました。ディフェンスでは仲間を鼓舞し、最後まで気持ちを見せて戦い続けます。しかし、どうしても試合が進むにつれてプレーの強度が落ちることは避けられません。第3クォーターに5-26と失速したのが響き、最終スコア53-107で敗れました。
それでも、二宮選手は敗戦から収穫を得ることを考え、落ち込みはしません。苦しい状況も真正面から受け入れることで、必ず打開策は見いだせる。真っ直ぐ前を見つめる二宮選手からは、これまで何度となく逆境を跳ね返してきた強さが感じられます。
5人で戦ったラスト2試合を落とした和歌山南陵は、3勝3敗の4位で「U18日清食品 近畿ブロックリーグ2024」を終えました。苦しい戦いにはなりましたが、それでも最後まで戦い抜いたことが、今後の彼らのキャリアに、そして人生に大きなプラスとなるはずです。「今後もバスケを続けます」と力強く語る二宮選手にとって、この経験が大きく生きる時が必ずやって来るはずです。
「U18日清食品ブロックリーグ2024」 会場での観戦情報
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