「主力にマークが集中したときこそ、自分が」
福岡第一 #10 宇田ザイオン
新潟県の新潟市東総合スポーツセンターで開催された「U18日清食品トップリーグ2024」の2日目、第1試合で東山(京都府)と福岡第一(福岡県)の対戦が実現しました。両者は8月に行われた全国高等学校総合体育大会(インターハイ)でも準決勝で激突し、68-52で勝利した東山がそのまま優勝まで駆け上がっています。インターハイのほかにも交歓大会で何度も対戦している両者。まさしく手の内は知り尽くした間柄です。
試合は序盤からハイレベルな攻防が展開されます。福岡第一がミスマッチを突いた#10宇田ザイオン選手(3年/184cm)のポストアップを起点に攻め、#34シー ムサ選手(2年/208cm)や#33 宮本聡選手(2年/168cm)の得点で先行すると、東山も流れるようなパスワークから#6 カンダ マビカ サロモン選手(2年/203cm)や南川陸斗選手(2年/187cm)が加点。
それでも、じわじわ点差を引き離したのは福岡第一でした。序盤からオールコートで激しくプレッシャーをかけ、ハーフコートになれば2-3ゾーンで東山の動きを制限します。オフェンスリバウンドにも積極的に絡んでチャンスを増やすと、一気に点差を拡大。前半を終えて43-27と、オフェンスを武器とする東山をディフェンスで上回る福岡第一らしい試合展開です。
後半に入っても福岡第一の流れは止まりません。球際の粘り強さやリバウンドへの執念を見せてボールを確保すると、瞬く間にコートを駆け抜け得点を重ねていきます。第3クォーター残り4分48秒にはムサ選手のスラムダンクが決まって点差は20点台(52-31)に。その後も一方的な展開となり、最終スコアは78-51。リバウンドで57-43(オフェンスリバンド25-12)と圧倒し、東山から18本ものターンオーバーを引き出す見事な勝利でした。中でも25得点、18リバウンドを記録したムサ選手と、#35 宮本燿選手(2年/168cm)や八田選手らガード陣が際立った活躍を見せていましたが、彼らを影から支えたウィング陣の活躍も見逃せません。
序盤の流れを作った宇田選手もその一人です。184cmとフォワードの選手としては決して大きくない宇田選手ですが、85kgの体重と立派なフィジカルを武器にインサイドのディフェンスやリバウンドで存在感を発揮。オフェンスに転じればボールプッシュから3ポイントシュートまで打つ万能なプレーを見せました。スタッツは8得点、10リバウンド、2スティール、2ブロックというオールラウンドなものです。
宇田選手は「中学の頃から体は強くて、リバウンドなどは得意でした。福岡第一では聡と燿や八田さんにマークが集中するので、そういうときこそ自分が得点できたらいいなと思っています」と自身の役割を話します。ただ、この試合の自身の出来には「30点くらい」と低めの評価。「ディフェンスなどは良かったのですが、まだシュートを決め切れなかった場面が多かったので…」。こう課題を口にするように、今後のテーマの一つはオフェンスの精度アップです。
井手口コーチは宇田選手について、「彼は実はうちのキーポイントです。去年の(4番ポジションだった)世戸陸翔も入学してきたときは不器用な選手でしたが、最終的にはああいうオールラウンドな選手に成長してくれました。ザイオンや#39 藤田(悠暉/2年/193cm)もそういう選手を目標にしてほしいですし、4番ポジションが安定してくるとウチのバスケはすごく安定します」と期待を込めます。続けて、こうも話しました。「ザイオンにはみんなが疲れてきたときに点を決め切れる、リバウンドを取り切れる選手になってほしいですね。本当はザイオンは40分出したい選手なんです」
宇田選手は福岡第一にとっては“影の仕事人”といえる立場の選手です。そして、影が強いほどに光は輝きを増すもの。井手口コーチもチームの土台となる可能性を宇田選手に感じているのでしょう。彼の存在感がさらに際立つようになれば、福岡第一はより楽しみなチームに変貌するに違いありません。
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