U18日清食品トップリーグ2024 (男子) 大会レポート
~実力伯仲の中で僅差をものにした福岡大学附属大濠が初優勝~
「ケガなく7試合を戦えたこと、いろいろな選手を大会期間で育成できたこと、そして1ポゼッション、2ポゼッションといった僅差の戦いをしっかり勝ち切ることができ、自信を付けられたこと…。そういったことを含め、すばらしい大会になったので、心から感謝したいと思います」
優勝記者会見で、そう語ったのは福岡大学附属大濠(福岡県)の片峯聡太コーチです。U18世代国内最高峰リーグ「U18日清食品トップリーグ2024」の男子は11月17日に最終日を迎え、福岡大学附属大濠が6勝1敗で悲願の初優勝を飾りました。また、準優勝から第5位までの4チームが、全て4勝3敗で並ぶという実力伯仲の展開となりました。
片峯コーチの言葉どおり、福岡大学附属大濠は僅差の戦いの中で安定感ある強さを発揮しました。6勝のうち、福岡第一(福岡県)、八王子学園八王子(東京都)、美濃加茂(岐阜県)、東山(京都府)との4試合は全て3点差の勝利。特に初戦の福岡第一戦は「FIBA U18 アジアカップ 2024」で片峯コーチ、#14 高田将吾選手(3年/189cm)、#8 渡邉伶音選手(3年/206cm)が不在でしたが、代わってスタメン起用となった#6吉岡陽選手(2年/184cm)、#12 サントス マノエルハジメ選手(2年/194cm)がそれぞれ12得点と存在感を発揮し、大きな1勝を手に入れて勢いに乗りました。接戦の緊張感をコート上で味わうことで選手たちは一皮も二皮もむけ、選手層はさらに分厚くなったといえるでしょう。また、タフな国際舞台から帰国した高田選手や渡邉選手も、この「U18日清食品トップリーグ2024」ではよりパワフルなプレーで仲間をけん引。ゲームキャプテンの#13 湧川裕斗選手(3年/181cm)と渡邉選手が「BEST5賞」、高田選手が「オールディフェンシブBEST5賞」を受賞し、確かな自信を持ち帰りました。
また、2位以下が大混戦となる中、最終戦で福岡第一とのオーバータイムを4点差で制し、準優勝となったのが美濃加茂です。今年は春から3年生5人が不動のスタメンとなっており、初出場の「U18日清食品トップリーグ2024」でも豊富な経験を生かして苦しい時間帯でも落ち着いていました。それが如実だったのが最終戦で、福岡第一に長くリードされる展開ながら、慌てず食らい付いて延長戦に持ち込んでの勝利。#5 後藤宙選手(3年/180cm)は、「レベルの高い戦いの中で、各チームそれぞれに特色がありました。『相手がこういうチームだから、こうしよう』と、自分たちで話し合って判断しながら戦う対応力が身に付いたと思います」と収穫を語ります。
そして惜しくも第3位となったのが福岡第一。主力に下級生も多く試合によって波もありましたが、5人がかみ合ったときには堅守速攻のスタイルを武器に爆発力を発揮し、大会に大きな爪痕を残しました。キャプテンの#77 八田滉仁選手(3年/178cm)は「最終戦にいくにつれ、福岡第一らしい激しいディフェンスからの速攻というスタイルが多く見られるようになりました。それはチームとしての成長だと思います」と、チームで多くの学びを得た様子。今回の「U18日清食品トップリーグ2024」が3年連続の出場でしたが、今年もまた4位以上に入って来年度の出場権を得ました。
続く第4位は、インターハイ優勝の東山。序盤は「FIBA U18 アジアカップ 2024」から帰ってきたエース・#5 瀬川琉久選手(3年/184cm)との連係がなかなか合わなかった部分もあり、「うまくいかなかったときにどうするのか、最初は迷いながらゲームしていました」(大澤徹也コーチ)と苦しみましたが、試合を重ねるにつれ瀬川選手もフィットし、チームとしても上り調子に。11月15日に美濃加茂を、17日に開志国際(新潟県)を破って良い形で「U18日清食品トップリーグ2024」を締めくくりました。大澤コーチは「インターハイで優勝して追われる立場というものを今まで経験したことがなかったので、去年の『U18日清食品トップリーグ2023』とはまた違った難しさを、今年は経験させてもらいました。僕にとっても子どもたちにとっても、すごく良い学びになりましたし、チームの力を思うように出せない中でも勝ち切れた試合というのは自信になったと思います」と振り返っていました。
開志国際は最後まで優勝争いに絡みながら、最終的には僅差で第5位となりました。ただ、11月10日には地元・新潟開催の試合で福岡大学附属大濠に唯一土を付けるなどインパクトを残し、今大会の「MIPチーム賞」を初受賞。富樫英樹コーチは「開幕のときはまだチームができていない状況でのスタートでしたが、10月、11月と徐々に出来上がってきたと思います。選手の組み合わせによって、いろいろなことができるチーム。特にオフェンス面が自分たちの強みになったと思います」と手応えを口にします。インターハイはベスト8に終わり、この「U18日清食品トップリーグ2024」でも序盤戦は苦しい戦いが続いたものの、徐々に選手たちの顔つきも変わり、シュートが入れば大きく盛り上がるような持ち味の明るい雰囲気も戻ってきました。この全7試合で、大きく進化を遂げたチームの一つです。
第6位は、3勝4敗の八王子学園八王子。この「U18日清食品トップリーグ2024」には初めての出場でしたが、9月7日の開幕戦ではエーススコアラーの#12 十返翔里選手(3年/192cm)を「FIBA U18 アジアカップ 2024」で欠く中、#7 平原侑真選手(3年/185cm)の活躍などで開志国際から金星獲得。そして9月22日には東山を1点差で下すなど、大きな爪痕を残しました。エースの十返選手は大会トップの平均23.6得点という活躍を見せ、「BEST5賞」にも選ばれています。結果こそ上位進出はなりませんでしたが、一戦一戦で多くの収穫を得られた大会になったことでしょう。
藤枝明誠(静岡県)は、2勝5敗で第7位という結果でした。主力には下級生も多く、#5 野津 洸創選手(2年/190cm)や#10 篠原遼太選手(2年/183cm)、#13 渡邊聖選手(1年/179cm)らが強豪チームとの戦いの中で貴重な経験を積みました。また、チームとしては2年連続の出場でも、キャプテンの#3 野田凌吾選手(3年/168cm)は昨年、膝の前十字靭帯のケガで「U18日清食品トップリーグ2023」のコートに1分も立つことができませんでした。そんな悔しい経験があるからこそ、今年は全試合にスタメン出場してゲームメイクを担い、「率直に楽しかったです。試合で自分に足りないところが分かって、平日の練習でそれを意識しながら克服できる。すごく自分のプラスになる大会でした」と笑顔を見せていました。
初出場の京都精華学園(京都府)は、ケガ人が出たことも手痛く1勝6敗で第8位となりました。美濃加茂相手に金星を挙げた以外、ほか6試合は悔しい結果に終わりましたが、どの上位チームとも互角に戦う時間帯が多くありました。山崎翔一朗コーチは「どんな強いチーム相手でも、自分たちの良い時間帯を作れたことは自信にもつながりましたし、逆に毎試合で悪い時間ができてしまうという課題が見えたことにも感謝したいと思います。強豪チームとの試合を重ねる中で、選手たちは精神面でも成長し、ここ1本粘らなければいけない場面で、少しずつディフェンシブに粘れるようになってきました」と話していました。
以上8チームが、成長を重ねながら数々の熱戦を繰り広げた「U18日清食品トップリーグ2024」。福岡大学附属大濠も、優勝したとはいえその差は紙一重だったことを体感しており、決しておごりや慢心はありません。なお、3年目の開催となる今年度は、過去2年に増して大会運営に多くの高校生たちが携わり、テーブルオフィシャルズやモッパー、そしてハーフタイムショーなどで地元の高校生たちが活躍を見せました。中には“高校生審判”が担当した試合もあり、出場選手のみならず、それを支える高校生たちにとってもかけがえのない経験になった様子です。来年度も、さらに進化した「U18日清食品トップリーグ2025」で、日本中を“沸かす”熱い戦いが見られることを期待したいと思います。
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