3年生の挑戦「やりきって終わることができました」 県立福井商業(福井県)
県立福井商業(福井県)は同じ県のライバルである北陸(福井県)に勝つことを目標に掲げて練習に励んできましたが、11月3日に行われたウインターカップ予選の決勝で北陸に敗れました。その9日後となった11月12日、「U18日清食品 北信越ブロックリーグ2023」のコートには県立福井商業の3年生の選手が揃っていました。ウインターカップ出場の可能性は潰えましたが、彼らは最後までこのチームで戦い抜くことを選択したのです。 山田真輝ヘッドコーチは、選手たちの選択についてこう話します。「「U18日清食品 北信越ブロックリーグ2023」への出場権は3年生が勝ち取ったもの。彼らにやる気がなければそれまでですが、みんな試合を楽しみにしているので、最後まで戦ってもらいます」
キャプテンの廣瀬琉生選手は自分たちの選択をこう説明します。「福商には3年生が残る文化があまりなく、僕たちも引退するものだという感覚でしたが、コーチから『やるか?』と言われた時点で全員が『やろう!』という気持ちでした」。シューターの藪下葵選手が「インターハイ予選で負けた時点で納得いくまでやるつもりでした」と語れば、ガードの高島杏滋選手は「北陸との試合で力を出し切れず、このままでは終われないと思っていました」と続け、全員が気持ちを一つにしています。 11月12日の高岡第一(富山県)との試合、彼らの思いが形になりました。高岡第一の攻守にアグレッシブなバスケに圧倒され、第3クォーター終了時点で56-74と大差をつけられる苦しい展開でしたが、彼らの気持ちは折れることなく、第4クォーター開始から4分半で20-2のランで追い付き、そこからリードチェンジを繰り返す熱い攻防に。チームで作った3ポイントシュートのチャンスを藪下選手が決め、93-87の大逆転勝利を収めました。猛攻を見せた終盤はベンチもお祭り騒ぎ。ベンチも含めて全員一体で作り出した雰囲気が、勝利を呼び込む力になりました。
藪下葵選手は「プレッシャーはなかったです。気持ちが乗っていたし、打つしかない、決めるしかないという感じでした」と勝負を決めたビッグプレーを振り返ります。ただ、この勝利に山田ヘッドコーチに驚くことなく、「彼らが積み上げてきたものが出ただけです。夏にシュートを1万本打ったり、それだけのことはしてきた選手たちなので」と、当たり前のように受け止めていたのが印象的でした。 そんな県立福井商業の最後の挑戦が、11月25日の帝京長岡(新潟県)との試合でした。「北信越ブロックで最も強いチームの一つですし、あこがれる気持ちもあります。自分たちのバスケをして試合を楽しみたいです」と語る3人は、全力で帝京長岡に立ち向かいました。後半に突き放されて46-79で敗れましたが、試合後の選手たちの表情には充実感が見て取れました。
廣瀬選手はこう語ります。「帝京長岡さんは本当に強いチームで、そこに自分たちがどこまで通用するか確かめたくて2週間練習をしてきました。最後の試合という意識はあまりありませんでしたが、時間が進むのはいつもより早く感じたかもしれません。自分たちのバスケはできたと思います。この「U18日清食品 北信越ブロックリーグ2023」があったおかげで、やりきって終わることができました」 これで彼らの高校バスケは終わり。チームもベンチも一体となって戦う県立福井商業バスケットボール部は後輩たちの代に引き継がれますが、廣瀬選手は「多分、週に何度かは部活に行くと思います。僕たちは学年に関係なく仲の良いチームなので、引退した上級生が来ても嫌がられないはずなので(笑)、練習を手伝いたいです」と笑顔で語りました。
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