日環アリーナ栃木で開催された「U18日清食品トップリーグ2025」第2週の最終戦は、今夏の全国高等学校総合体育大会(インターハイ)で初優勝を果たした鳥取城北(鳥取)と、同3位入賞を果たした仙台大学附属明成(宮城)の対決となりました。両者はインターハイ準決勝でも対戦し、その試合は68-71という大接戦の末に鳥取城北が逃げ切って、そのまま日本一に輝きました。仙台大学附属明成にとっては、その試合のリベンジを懸けた一戦です。
互いにアップテンポな走る展開を得意とするチームだけあって、序盤から走り合いの展開となります。仙台大学附属明成は#4 小田嶌秋斗選手(3年/165cm)のジャンプシュートやアシスト、鳥取城北は#4 新美鯉星選手(3年/177cm)のドライブ、流れるようなパスワークから#5 永田惺雅選手(3年/176cm)の3ポイントシュートなどで得点し、第1クォーターを終えて21−23と鳥取城北が僅かにリード。
追いかける仙台大学附属明成は第2クォーターに3年生が流れを変えます。小田嶌選手の3ポイントシュートや#9 檜森琉壱選手(3年/187cm)のリバウンドショット、さらには#10荻田航羽選手(3年/190cm)のジャンプシュートで9-0のランを作り、一気に逆転に成功したのです。中でも小田嶌選手のスピーティーなゲーム作りが目立つ時間帯でしたが、ここでは潤滑油としての役割を果たした檜森選手を紹介します。
檜森選手は派手なプレーで会場を沸かせるようなタイプの選手ではありません。インサイドの選手としては決してサイズがあるわけでもありません。しかし、オフェンスではオフボールで積極的に味方にスクリーンをかけてチャンスを作り、自らも少ないシュート機会を確実に点につなげます。加えて、必ずといっていいほどリバウンドに絡み、泥臭く戦う仙台大学附属明成のチームスタイルを誰よりも体現する一人です。
畠山俊樹コーチはそんな檜森選手について、「1年生の頃から泥臭いことを一生懸命に頑張ってくれていますし、チームとしても非常に大切な選手。目立たないところで一生懸命やってくれる子なので、僕は彼に“明成の9番”を着けさせています」と信頼を寄せます。
檜森選手も自身の役割を理解しており、「ガードが一人でボールを運べないときなどに自分がつなげるような気が利くプレーヤーになっていければチームとしても楽だと思います。俊樹さん(畠山コーチ)も自分が1年生のときからそれを伝えてくれているので、そういうつなぎの部分が自分の役割」だと話します。
一方で、彼もまだ高校生。自分がもっと活躍したいというエゴも過去にはありました。「2年生のとき、当時の3年生たちが引退した後に伸び悩んでいた時期がありました。感情のコントロールがあまりできていなくて、俊樹さんや高橋(陽介)さんに指摘されていました」。その出来事がきっかけで「そこから変わろうと思って変わることができました。感情の波が激しくて、良いときは良いんですけど、ダメなときはずっとダメで。そうなるとチームの雰囲気も悪くなってしまうので、今年はゲームキャプテンとしても自分が一番声を出して士気を上げられるようになってきています」と檜森選手。自身の弱い部分に向き合った先に、現在のアンセルフィッシュな活躍があるわけです。
それは、彼がそれだけ素直に物事を受け止められる人間だということでもあります。畠山コーチも「オフコートでは本当に素直な子。バスケでは不器用で一つ新しいことを教えるとそれまでやってきたことが崩れてしまうこともあるのですが、そういうときに『お前の持ち味は何?』と話しながら、新しいことにチャレンジさせています。(素直な分)言ったことをやり過ぎてしまう部分もありますけど、言われたことを受け入れてやろうという気持ちがあります」と檜森選手の人間性を理解して、コントロールしながら試合に登用しています。
鳥取城北戦に話を戻すと、前半を僅か1点リード(38-37)で折り返した仙台大学附属明成は、後半に入ってさらにディフェンスのプレッシャーを強め、第3クォーターは僅か8失点。第4クォーターに入っても足を止めずに、さらにリードを拡大していきます。最後は78-67の2桁点差で見事にインターハイのリベンジを果たし、「U18日清食品トップリーグ2025」でも前日の帝京長岡(新潟)戦に続く連勝を手にしました。
檜森選手のスタッツは12得点、8リバウンド(うちオフェンスリバウンド5本)、7アシスト、2スティールというバランスの取れた見事な数字。練習してきたというミドルレンジ付近からのジャンプシュートも効果的に決まり、「この試合はリベンジを果たすという意味でも戦っていいましたし、この週末は連勝することもできたのでとても良かったです」と勝利とともに自信を付ける一戦となりました。
仙台大学附属明成は残る5試合でも、“明成らしさ全開”のバスケを見せてくれるに違いありません。もし彼らの試合を見る機会があれば、ぜひ檜森選手のプレーに注目してみてください。
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