県立沖縄水産(沖縄県)に嘉陽宗紀コーチが赴任したのは2022年のこと。その時の男子バスケットボール部には選手が7人しかいませんでした。沖縄県内で何度も公立高校を全国大会に導いてきた指導者である嘉陽コーチは、少ない部員たちへ常に「やればできる」と伝え続け、選手たちもその指導に必死でついていきました。
徐々に部員が増え、選手たちも着実に力をつけた結果、今夏のインターハイ沖縄県予選で57年ぶりの優勝を果たし、ついに全国への出場を果たしました。
「U18日清食品ブロックリーグ2025」に出場が決まると、嘉陽コーチは対戦相手を自分たち自身でしっかり分析することを選手たちに求めました。「沖縄という離島県では、県外のチームと対戦する機会はなかなかありません。ただ試合をこなすだけでなく、その前の準備段階も成長に生かしたい。対戦するチームの特徴や戦術をスカウティングし、事前の練習から対戦相手を意識した準備をする。戦い慣れていない相手に向けてどう準備するのか。試合後も勝敗に一喜一憂するのではなく、たとえ勝利したとしても相手から何を学ぶのかを大事にしたいです」
「その意味でもこのリーグ戦に出場する価値は大きいです。選手たちは自分たちで工夫しながら映像を共有したり互いに話し合ったりして、自分たち自身で戦い方を考えていく訓練になっています」
そして迎えた9月6日、初戦で白樺学園(北海道)と対戦しました。試合は序盤から県立沖縄水産が激しいオールコートプレスで主導権を握ります。エースガードの金城都馬選手は、フロントコートから相手ボールマンにプレッシャーをかけ続け、相手のターンオーバーを誘発します。金城選手はオフェンスでも独特のリズムから繰り出す鋭いドライブで、得点やアシストを重ねました。
第2クォーターに白樺学園がゾーンディフェンスを敷くと、金城選手は得意のドライブではなく、積極的に3ポイントシュートを打つことを選択しました。相手ディフェンスの変化に惑わされずに対応。まさに対戦相手をイメージした準備が生かされた戦い方で、76-63で勝利しました。
金城選手は勝利した後も、対戦相手の良い部分を見つけて、そこから学びを得ていました。「白樺学園は得点を決められた後のリスタートが早く、素早くリングに到達して得点に繋げる意識が強かったです。自分たちのような小柄なチームも、それを目指さなければいけません」
「U18日清食品ブロックリーグ2025」での全国の強豪との戦いは続きます。金城選手は自分自身の強みを生かしつつ、チームを勝利に導くつもりです。「自分の持ち味は1対1からの得点です。それに加えてガードとしてどうゲームを作っていくかを意識しています。今日の試合でも、自分自身でシュートを打ち切る場面と、引き付けてアシストする場面をもっと明確に判断する必要がありました。沖縄県外のチームは高さや上手さがあるので、異なる環境や相手との試合にも上手くアジャストする力をつけていきたいです」
『相手をより深く知る』ことの大切さを、嘉陽コーチは部員数が少ない時から選手たちに伝えてきました。嘉陽コーチの指導を入学当初から受けている今の3年生は『相手をより深く知る』こそが県立沖縄水産に受け継がれてきたものだと自覚し、それを後輩たちにも示そうとしています。
金城選手は「僕たち3年生が、先輩たちが大事にしてきたことを後輩たちに伝えています。バスケットボールのプレー面だけでなく、日々の生活を大事にすることで成長できると背中で示していきたいです」と意気込みを語りました。7人で始まった県立沖縄水産の精神は、これから後輩たちに受け継がれていきます。
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