「もう一度、兵庫でナンバーワンになって全国へ行く。それを目標に頑張っています」。そう語るのは尼崎市立尼崎(兵庫県)の吉川公明コーチです。インターハイ出場10回、ウインターカップ出場6回を数える兵庫県の名門ですが、近年は三田松聖(兵庫県)の後塵を拝しており、今年の夏も『兵庫ナンバーワン』に返り咲くことはかないませんでした。それでもタレントが揃う今年のチームには「ポテンシャルはあります」と自信をのぞかせます。
「U18日清食品ブロックリーグ2025」に初出場となる尼崎市立尼崎は、グループEで唯一の公立高校です。吉川コーチはチーム強化の方針をこう説明します。「入部してくれた選手たちには、すべてのポジションができるようになってほしい。ガード、フォワード、センター、すべてを経験する中で得意なポジションや得意なプレーを見つけて、伸ばしていく。絶対的なエースはいないので、全員がオフェンスできるように取り組んでいます」
キャプテンを務める佐野真理奈選手は、吉川コーチの言葉をなぞりつつ、「U18日清食品ブロックリーグ2025」への意気込みをこう話します。「私たちの強みはポジションに関係なく戦えること。強豪校と戦うこのブロックリーグで、その強みがどこまで通用するか確認しつつ、1試合ごとに課題を洗い出して、次の試合で改善できるように取り組んでいきたいです」
そうして迎えた開幕戦では、近江兄弟社(滋賀県)と対戦。尼崎市立尼崎は序盤から一気呵成に仕掛け、リバウンドやルーズボールといった球際で強さを見せ、インサイドとアウトサイドを巧みに使い分けて効率良く得点を重ねていきます。
「相手にはサイズのある選手がいなかったので、意識的にセンターのプレーを使って確実に点を取ることができました」と佐野選手が語るように、瞬時に相手を分析して効果的なオフェンスを組み立てていきます。
それができるのも全員がいろいろなポジションで練習してきた成果です。この日は特に澤田侑希選手の動きにキレがあり、3ポイントシュートやレイアップ、ゴール下へダイブしての得点など大活躍を見せ、尼崎市立尼崎は前半だけで49-20と近江兄弟社を突き放しました。
下級生が多くコートに立った後半は一気に点差を詰められましたが、それでも何とかリードを守り切り、76-70で初戦勝利を飾りました。吉川コーチは「うれしいです」と笑顔を見せつつ、「後半の試合運びはまだまだ。現代バスケはハードな競技で、ウチは部員が18人と少ない分、全員に頑張ってもらわないといけません。もっと良いチームになれると思っているので、今後も全員を伸ばしていきたいです」と、このリーグ戦を活用したチームの底上げを見据えていました。
「もっと良いチームになれる」と思っているのは吉川コーチだけではありません。佐野選手はきっぱりと言い切ります。「私たちの目標は全国ベスト8です。そのためにはまず県で優勝しなければいけません。今日の試合でも課題が出たので、練習から改善してどんどん強くなっていきたいと思います」
吉川コーチは佐野選手のことを「しっかりしているし、賢い選手。周りも見えています」と評価すると同時に、「技術面はまだ甘さがある。もっと何でもできる選手になれるはず」とまだまだ成長を求めています。
キャプテンとしてチームを牽引する佐野選手は、「みんなには私の背中を見てついてきてもらいたい。そのためには練習から誰よりもやらないといけないと思っています。生活面でも隙を見せないようにしています」と言います。
ひたむきに、全力でバスケに打ち込むのは大きな夢があるからです。「頑張れるのはやっぱりバスケが好きだからです。大学に進んでもバスケを続けますし、もっと成長したい。バスケで行けるところまで行きたいと思っています」
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