新田(愛媛県)はコート上の5人が走りに走って連鎖的にスペースを作り出し、そのスペースへとまた走り込みながらボールを動かす超ハイペースで超オフェンシブなバスケを展開します。そのスタイルは唯一無二ですが、ただでさえ一瞬のタイミングのズレがターンオーバーに繋がる合わせのプレーを高速かつ連続で行うため、難易度は非常に高いと言えます。
それをどれだけ突き詰め、磨き上げられるかが毎年の勝負となりますが、この『U18日清食品ブロックリーグ2025 グループG』では『新田のバスケ』を思うように展開できず、ここまで4戦全敗と苦戦が続きます。
9月20日と21日には、県立沖縄水産(沖縄県)に55-111、尽誠学園(香川県)に69-102と連日の大敗を喫しました。特に県立沖縄水産戦ではパスのタイミングが合わずにターンオーバーを連発。相手との勝負以前に自分たちのオフェンスを展開できないもどかしさが募る試合でした。
玉井剛コーチは「高校バスケは3年生です。3年生がしっかりすればチームはしっかりします」と最上級生の奮起を求めますが、試合中に厳しい言葉を発することはなく、選手が自分たちで課題にどう向き合うかを見守りながら、ポジティブな声掛けに徹しました。
キャプテンの井上海里選手を始め3年生が中心となり、試合中に何とか立て直しを図る姿は印象的でした。井上選手は試合をこう振り返ります。
「まずはディフェンスとリバウンドだったと思います。新田はブレイクで攻めて、パスでアウトナンバーを作って攻めるチームですが、そこにフォーカスしすぎてリバウンドが取れない、取っても繋ぐところが雑になってしまう。無駄なドリブルが一つ入るだけで周りのスプリントが無駄になるし、そういう一人ずつの意識のズレがターンオーバーになりました。日頃の練習での強度が低い、頑張るべきところで頑張れていないのがゲームで出てしまいました」
ターンオーバーの連発は、走るバスケを一度やめてボールをゆっくりと動かせば止められるはずです。しかし、井上選手と1年生の小坂悠陽選手のガードコンビはその選択をせず、あくまで『新田のバスケ』を貫こうとしました。
「やらなければいけないのはコートの中でしゃべること。それは新チームになってからずっとコーチに指摘されています。ミスはコミュニケーションを取ることで解決できるミスです。パスが繋がらないから新田らしくないのではなく、走って繋ぐところでボールを出す選手ともらう選手との意思疎通ができていないのが新田らしくないと思っています」
コミュニケーションが大事なのは誰でも分かっていますが、コート上で質の高いコミュニケーションを取るのは簡単ではありません。「ターンオーバーをしてしまった時に『自分はこうしてほしかった』とお互いに伝えるコミュニケーションをずっと意識はしています。ペースを落とすのではなく、全員がコミュニケーションを取って繋がることで『新田のバスケ』をやっていきたいです」
井上選手はポイントガードとして、キャプテンとして、コミュニケーションのきっかけを作ろうとしています。ただそれと同時に「コミュニケーションは一方が取ろうとするものではない」とも考えています。「試合に出ている選手だけが意見を出すのでは限界があります。ベンチにいる選手の意見も大事ですし、学年に関係なく何でも言える環境を作りたいです。それは試合でどうにかするのではなく、練習とか私生活の部分から作っていくものです」
「常に声を出すのは大事ですし、僕はやっていきますが、そこに頼るのではなくみんなで意見を言い合って。それがバラバラでもみんなそれぞれ言いたいことを言って、最後にチームとしてまとまるように。このブロックリーグを戦いながら、そんなチームになれていけば良いなと思います」
「今は負けているし内容も良くないので大きなことは言えませんが、初戦の高知中央戦も新人戦でやった時に比べれば試合内容はかなり良くなっていました。ただ、良くなっていくのは毎試合続けていかないと意味がありません。負けから得た教訓を全員が意識して練習に取り組むことで、どんどん良い試合をして、勝てるようになっていく。負け癖がつくのは良くないので、チームとして成長して最後は勝っていきたいです」
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