宮崎県ので開催された「U18日清食品トップリーグ2025」の第7週、会場の早水公園体育文化センターには初日の朝から長蛇の列ができ、注目度の高さがうかがえました。第1試合は大会3連覇を目指す京都精華学園(京都府)と、現在2勝3敗ながら多くの接戦を演じている慶誠(熊本県)の対戦。
立ち上がりは京都精華学園が#15 ンガルラ・ムクナ・リヤ選手(188cm/2年)、慶誠が#24 フェイバ・ヘンリー選手(184cm/2年)のゴール下で得点しますが、以降は両者シュートタッチが定まらずに点が伸び悩みます。ロースコアの接戦を抜け出したのは京都精華学園。セカンドユニットの2年生シューター#12 谷彩南選手(172cm)が2本の3ポイントシュートを決めてリズムを作ると、第1クォーターで19-11、第2クォーターもじわじわと突き放して43-30で前半を終えます。
後半に入っても京都精華学園が主導権を握ったまま試合が進み、一方の慶誠はオフェンスでなかなかボールが回り切らずに難しい時間帯が続きます。最後まで点差は縮まらず、京都精華学園は下級生も積極的に起用しながらの盤石の戦いぶりで4選手が2桁得点を挙げる活躍を見せ、71-56で快勝しました。
この勝利により今大会5連勝を飾ったチームの中から、ピックアップしたいのは3年生の#6 石渡セリーナ選手(178cm/3年)です。
4選手が2桁得点を記録したと前述しましたが、その中に石渡選手は含まれていません。彼女はこの試合でチーム最長の34分10秒出場したものの、2得点にとどまっています。ではなぜ、彼女をピックアップしたいのか──それは得点以外のスタッツを見れば分かります。
石渡選手はこの試合で4本のオフェンスリバウンドを含む計8リバウンドに加え、3アシスト、2スティール、そして4本のブロックを記録するオールラウンドなパフォーマンスを見せたのです。慶誠戦前の4試合でも平均8得点、13リバウンド、3.3アシスト、1.3スティール、1.5ブロックを記録しており、リバウンドはスタッツランキング4位、ブロックは同3位タイでした。
指揮を執る山本綱義コーチは「今年はかなり2年生、1年生を試合に絡めていますが、どうしても確実なチーム状況ではないです。最後の最後まで気を許すことができないので、3年生を一人はコートに残しておきたい。石渡は1、2年生の頃はすごく迷いのある、そしてまだ力が少し足りない選手でした。それが今はチームの柱に、中核になってきてくれていると思います。それがチームが勝てている一つの理由かなと思います」と石渡選手を評価します。決して派手ではないものの、タレントがそろうチームの屋台骨となっているのが彼女なのです。
それでも、石渡選手は慶誠戦の自身のプレーに厳しい評価を与えます。
「自分たちはディフェンスがまだ未完成で、留学生がいるチームと戦ったときにどう守るか、攻めるかがまだまだ未熟。課題の残った試合だなと思いました。個人的に相手の陽本麻生選手(#1/170cm/3年)をマークすることがあったんですけど、もううますぎて…全然止められませんでした。前半は守れている場面が何回かあって、後半も3ポイントシュートは止められましたが、その後のドライブやジャンプシュートに対して気抜いてしまう部分があったので、そこをしっかりと最後までやり切れるようにしたいです。今日の試合は100点満点中45点くらい」
チーム内での自身の役割が明確であるがゆえの辛口評価なのでしょう。
改めてプレー中に意識していることを聞くと、「自分はオフェンスに対してそんなにエゴイストではない」と笑います。「京都精華学園に来た最初の時期は、オフェンスでもっと自分が点を取りたいと思っていたんですけど、ディフェンス、ルーズボール、リバウンドをチームとして徹底することを毎日やっていたら、気付いたら今のプレースタイルになりました。中学まではインサイドで自分が点を取ることが体に染みついていましたが、今は目立たないところで目立つ、みんなが見ていないところで手を抜かずに頑張れる選手でいたいと思っています」
実力ある選手に自身のエゴを出さずにチームプレーに徹することは、言葉にするほど簡単なことではありません。それを体現しているからこそ、石渡選手は山本コーチやチームメイトからの信頼を勝ち得ているのです。
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