“福岡対決”──「U18日清食品トップリーグ2025」の締めくくりとなる男子最終試合は、福岡第一と福岡大学附属大濠(いずれも福岡県)によるライバル対決となりました。
前週は福岡第一が鳥取城北(鳥取県)と東山(京都府)に、福岡大学附属大濠が東山に、それぞれ完敗を喫していました。だからこそ、両者にとってこのカードはライバル対決であると同時に、前週の悔しさを晴らす舞台ともなりました。
立ち見も出る超満員の観衆が見守る中、先に抜け出したのは福岡大学附属大濠。#14 本田蕗以選手(190cm/2年)や#6 吉岡陽選手(184cm/3年)が果敢にリムに切り込んでオフェンスを動かし、ディフェンスでもペイントを激しく守って得点を許さず。第1クォーターを23-14、第2クォーターはさらに点を拡大し、前半を47-27で折り返します。
全員がバランスよく攻めた福岡大学附属大濠の中で強い輝きを放った一人が、#7 村上敬之丞選手(181cm/3年)でした。第1クォーター序盤の流れを作った張本人であり、福岡第一が流れを掴みかけた場面で何度もそれを断ち切ったのも彼でした。
この試合は正司令塔の榎木璃旺選手(169cm/3年)がケガで欠場。村上選手がポイントガードをこなす時間帯も多くありました。3年生としての責任と司令塔としての責任──村上選手は以下のような思いでプレーしていたと語ります。
「璃旺がケガをして、自分がガードとして出なければいけない中で、最初は自分が璃旺の代わりをしようという考えになっていたのですが、片峯(聡太)先生からも『自分のやり方でやっていけ』と言っていただきました。それで、良い意味で璃旺の代わりじゃなくて自分を出すことを意識できたと思います。下級生中心のチームにはなってきますが、最後は3年生の力が大きく関わってくるので、3年生がチームを引っ張っていく力が一番大切かなと思います」
福岡大学附属大濠は攻防の高いインテンシティを後半も継続し、第3クォーターで65-37、第4クォーターも最後まで攻め気を姿勢を貫き、最終スコアは97−48。得点は今大会最多、失点は2番目に少ない渾身の試合内容で、「U18日清食品トップリーグ」の連覇を成し遂げました。
大差での勝利となったこともあって、村上選手の得点は前半の10得点のみでしたが、司令塔として試合の流れを作り、ディフェンスでも相手のハンドラーに対して張り付くような守りで自由を奪うなど、得点以外に7リバウンド、4アシスト、3スティールと多岐にわたる貢献。
前週は「自分たちに何が足りないのかを外から探してほしい」(片峯コーチ)という意図で、主軸の3年生はゲームに帯同せずに配信で後輩たちの戦いを見守りました。村上選手はその経験から得たものを、「責任感」だと語ります。
「3年生の責任感をもっと上げていこうと話しました。1、2年生とはよくコミュニケーションを取れていて、ダメなことはダメだと指摘はし合える仲ですけど、ダメだからこう変えていこうという声掛けができていなかったと、外から見てすごく思いました。そこを全員でやっていこう、もっとチーム一丸でやっていこうと話しました。先週、メンバーを外されたときはすごく落ち込んだんですけど、片峯先生が僕らを信頼してくださった上でメンバーに選出しないという決断をしたんだと僕は思っています。先生にもう一度認めてもらうという意味でも、頑張りたいと思っていました。
普段は常にコート上で戦う身。だからこそ、チームに帯同せずに外から試合を見る機会は貴重で、同時に危機感を強めることにもつながる良き教訓となったのです。
村上選手以外の3年生も例外ではありません。吉岡選手や勝又絆選手(188cm)、サントス マノエルハジメ選手(195cm)、#5 栗原咲太郎(183cm)、そしてベンチでチームを見守った榎木選手も、勝敗が決した最後の時間帯も気迫を見せ続けました。
片峯コーチも3年生のプレーについて、「3年生が中心になりながら、点差は開く中でもまだまだこれが必要だ、もっとこうしなきゃいけない、流れが少し悪くなった場面でもすぐ目を合わせて、呼吸を合わせてこうしていくぞという、悪い流れをすぐに断ち切ろうとする姿がありました。そこに1、2年生がしっかりついてきて思い切りコートの中で進めていくことができたので、今年のカラーというか、戦い方や勝ち方を今日のゲームで知ることができました。そして、勝ったことで自信を付けることができたので非常に良かったと思います」と及第点の評価を与えます。
苦い経験から改善点を見付け、それをコートで体現した福岡大学附属大濠の3年生たち。掲げたトロフィーの価値は、優勝以上に大きなものだったに違いありません。
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