昨年の「U18日清食品 近畿ブロックリーグ2024」で優勝を果たした三田松聖(兵庫県)は、「U18日清食品ブロックリーグ2025 グループF」で2年連続のリーグ戦制覇を目指しています。
コートに立つ5人が縦横無尽に動き、ポジションレスのオフェンスを武器とするチームはここまで5戦全勝を飾り、グループ首位で11月16日の倉敷翠松(岡山県)戦に臨みました。結果は77-80で惜敗し初黒星。前半に15点のビハインドを負い、後半はディフェンスから立て直して主導権を奪い返したものの、反撃はわずかに及びませんでした。
この試合でディフェンスのキーマンとなったのが3年生の四谷花音選手です。倉敷翠松の留学生オルショガブサヨ アヨミポシ選手に身体を張ったディフェンスで対抗し、反撃のきっかけを作りました。試合後、四谷選手はこう語ります。「新チームになってから留学生とマッチアップする機会が多く、この1年間でコツコツと対策を練って取り組んできました。今日はその成果を出せたと思います。試合には負けましたが、後半に点差を縮められたことにはチームの成長を感じられました」
三田松聖の初谷洋志ヘッドコーチも晴れ晴れとした表情で、「ディフェンスでの選手たちの判断は間違っていません。でも、あと少しが足りない。それを学ぶことができました」とこの敗戦を糧にできることに、喜びすら感じているようでした。
バスケを通じて選手一人ひとりの人間力を高めることに重きを置く初谷ヘッドコーチは、四谷選手を「劇的に変わって、大人になりました」と評価しています。「人のために考えられるようになって、プレーも良くなりました。チームのため、人のために行動する。その責任を自覚できるようになりました」
そのきっかけは、チームメートのケガというアクシデントだったと四谷選手は振り返ります。「夏のインターハイでキャプテンの木下(楓)がケガをしました。木下に負担をかけ過ぎないようにと意識していましたが、それでも頼ってしまっていました。彼女が離脱することになって『自分がチームを引っ張らないといけない』と覚悟を決めました」
四谷選手はチームを引っ張る意識が高まったことで、より責任感のあるプレーが増えたと実感しています。倉敷翠松戦でも留学生を相手に臆することなくリバウンドに飛び込み、オフェンスでは巧みなスペーシングで味方のアタックをサポート。一つひとつのプレーに意図を持ち、全力を出し切る姿はコート上でも一際目立ちました。
そのことを尋ねると、四谷選手は少し照れ臭そうに笑いました。「チームに貢献できることをやり続ける。その姿勢が一番成長した部分かなって思います」
心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる──。これはアメリカ合衆国の哲学者ウィリアム・ジェームズが残した格言ですが、四谷選手はバスケに向き合うことで人格を変えられたと明かします。「自分はもともと人とかかわるのが苦手で、それで考えが自分中心になっていました。ですが3年生になってから1、2年生とかかわることをずっと指導されてきて、少しずつコミュニケーションを取れるようになりました。今では試合中に後輩に指示を伝えられますし、声を出すことで自分を信頼してもらえるようにと心掛けています」
その言葉通り、試合中にはプレーが途切れたタイミングで積極的にチームメートとコミュニケーションを取る姿が見られました。
ただ、大学では新たな道へと進むことを決めています。「今までずっとバスケしかやってこなかったので、違う道でも頑張ってみたいと思うようになりました。違う道というのは語学です。将来はグローバルに活躍できる人材になりたいです」
バスケットボールを通じて多くを学び、自分の意思で運命を変える決心をした四谷選手は、最後に力強い言葉で締めくくってくれました。「バスケから学んだのは『人間力』を高めることの大切さです。これからの人生も常に『人間力』を磨くことを意識しながら頑張っていきます」
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