昨年の「U18日清食品 四国ブロックリーグ2024」で、聖カタリナ学園の中澤虹晴選手はチャンスを生かそうと一生懸命にプレーするも、気合いが空回りしてなかなか結果を出せませんでした。172cmのサイズとバネのある動き、卓越したボールコントロール技術を持つ中澤選手は、名門チームの2年生エースとして先発出場していましたが、本人はまだエースとしての自信を持てていませんでした。
高いレベルで攻守に連動する聖カタリナ学園のスタイルに合わせるには、バスケIQと経験が必要になりますが、スタメンで唯一の2年生だった中澤選手はまだ習熟度が足りず、先輩ばかりの中でプレーすることに遠慮もありました。
あれから1年。「U18日清食品ブロックリーグ2025 グループG」のコートに立つ中澤選手は、エースとして堂々たる立ち居振る舞いを見せ、オフェンスでもディフェンスでもチームを引っ張っています。
「あの頃は緊張でガチガチで、頑張ろうと思っても具体的に何を頑張ればいいのかも分かりませんでした。去年は部員が40人いて、その中で5人だけのスタートとして出させてもらっている責任感をちゃんと持とうとして、それで緊張してしまいました」と、中澤選手は苦笑いとともに下級生だった頃を振り返ります。
変化は去年のリーグ戦の途中にありました。「先輩たちが『ミスしても自分たちがカバーするから思い切ってやりな』と言ってくれて、全部をやろうとするのではなく点を取る仕事だけに集中するようになって、緊張せずにノビノビやれるようになりました」
プレーメークは先輩たちに任せ、自分の得意なプレーに集中する。そうすることでリーグ戦の終盤にはシュートの確率が上がり、得点という結果が自信の拠りどころとなったことで、他のプレーも上手くいくようになりました。しかし、一つ乗り越えればまた次の壁が出てきます。新チームになって先輩たちの支えがなくなった時、試合経験が少なくて緊張するチームメートを引っ張るのは彼女の仕事でした。
「自分が先輩に言われた言葉を思い出して『ミスしてもいいから思い切ってやろう』と声を掛けたのですが、最初はみんな緊張でガチガチでした。インターハイも緊張したまま終わってしまいました」
こうして今年もチームと中澤選手は苦労したのですが、転機は思いがけないところから訪れました。中澤選手が手首を痛めて欠場した試合で、他の選手たちに「自分がやらなければ」という自覚が生まれ、チームが機能し始めたのです。中澤選手が復帰した後もその良い流れが継続し、チームの動きはそれまでと比べて格段に良くなりました。
「U18日清食品ブロックリーグ2025 グループG」の最終戦を前に、聖カタリナ学園は県立富岡東(徳島県)に敗れていましたが、これは中澤選手が受験でプレーできなかった試合でした。1敗の状況で最終戦で当たったのは、ここまで全勝の東海大学付属福岡(福岡県)です。中澤選手が攻めるだけでなく、ディフェンスを引き付けて他の選手が攻めたりとチームの成長を示し、前半の19点差から後半に猛烈に追い上げる展開となりましたが、67-75で敗れました。
「勝てなかったのは残念ですが、留学生のいる東海大学付属福岡に思い切ってチャレンジできたのは良かったです。小さいことを言い訳にせず、逆に『小さいから勝てる』という戦い方で挑むことができました」と中澤選手は語ります。
最初からすべて上手くいくわけではなくても課題を一つずつ乗り越え、聖カタリナ学園はチームとして着実な成長を続けています。
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