逆転劇のきっかけとなった“渡邊聖タイム”
藤枝明誠 #13 渡邊聖
「U18日清食品トップリーグ2024」の初戦で、藤枝明誠(静岡県)は八王子学園八王子(東京都)と対戦しました。両者は8月に行われた全国高等学校総合体育大会(以下、インターハイ)の3回戦でも対戦しており、その試合は69-60で藤枝明誠が勝利しています。
八王子学園八王子としてはリベンジを期す一戦となりましたが、序盤でリズムを作ったのは藤枝明誠。この試合は大黒柱の#99 ボヌ ロードプリンス・チノンソ選手(3年/205cm)が不在ながら、代わって先発を務めた#44 アメー エマニュエル・チネメルン選手(1年/200cm)が八王子学園八王子の留学生をよく抑え、外回りの選手にも強度の高いディフェンスでプレッシャーをかけます。第1クォーターは20-12と藤枝明誠がリードします。
しかし、第2クォーターは一転して八王子学園八王子のペースに。しつこくボールマンにプレッシャーをかけてミスを引き出すと、#7 平原侑真選手(3年/185cm)の速攻や#0 ニャン セハ セダト選手(1年/203cm)の連続バスケットカウントなどで一気に逆転。藤枝明誠がタイムアウトを請求した残り時間4分48秒までの約5分間で17-2のランを展開しました。タイムアウト明けには藤枝明誠も反撃しますが、最後は#7 平原選手がブザービーターで前半を締めくくり、33-41。
嫌な流れに追い打ちをかけるように、後半に入ると藤枝明誠は正念場を迎えます。10点前後のリードを許す苦しい展開の中、インサイドを支えるチネメルン選手が4つ目のファウルをコールされてしまったのです。それを見逃さない八王子学園八王子は#0 セダト選手のインサイドを軸に一気に試合を決めにかかります。
ただ、そこに待ったをかけたのが藤枝明誠のルーキー#13 渡邊聖選手(1年/179cm)でした。前半は7得点だった渡邊選手ですが、勝負どころの第3クォーターで立て続けに3ポイントシュートを決めると、ドライブやミドルレンジからも得点を重ね、この10分間で一挙14得点。悪い流れを断ち切り、第2クォーター以来となるリードをチームにもたらしたのです。そして、渡邊選手の爆発以降、一度も逆転を許さなかった事実は、彼のビッグパフォーマンスが与えた影響力を物語ります。最終スコアは76-69となり、藤枝明誠は今大会初勝利を飾りました。
試合後、渡邊選手は「『U18日清食品トップリーグ』は中学生の頃から楽しみにしていた大会で、出場が決まったときは本当にワクワクしました。この大会に懸ける思いは強くて、感謝の気持ちを持ってプレーしようと思って試合に臨みました。なかなかリズムがつかめない時間もありましたが、みんなから『打ち続けろ』と言われますし、タッチが良い日もあればそうでない日もあります。それに、いつか入るだろうという自信はあるので、中学生の頃からずっとそのメンタルでプレーしています。そういう自覚を持って打ち続けて、後半にシュートが入り始めたという感じでした」と振り返りました。
渡邊選手は当時中学3年生だった今年3月の「B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP 2024」の決勝終盤に、6本連続の3ポイントシュートを決めて横浜ビー・コルセアーズ
U15を大逆転勝利に導いた実力者。第3クォーターの活躍はその試合を彷彿させるものでした。本人も「あの時間帯は『ここは自分だな』という感覚があってボールをもらいにいきました。チームプレーからは外れてしまうのですが、それでもここは自分だと思いました」と、当時と同様の強いメンタリティを持って戦っていたことを明かします。
強心臓なルーキーの活躍には金本鷹コーチも「ああいうところの勝負強さは、やっぱり彼が持っているものだと思いますし、チームとしても『待ってました!』という雰囲気があります。それに、彼はバスケットを見る力も持っていて、シュートだけではない部分も含めてチームに欠かせない存在になってきていると思います」と評価し、得点力以外の面での成長についても話します。「中学生の頃はボールを持って(今よりも)自分の好きにプレーしていたと思いますが、高校から先は5対5の中でいつシュートを打つのか、いつサポートに回るのか、リバウンドやディフェンスはどうするのかといったところが少しずつ分かってきたと思います」
「U18日清食品トップリーグ2024」の初戦を良い形で勝利した藤枝明誠と渡邊選手。今後訪れる“渡邊聖タイム”にも大いに期待したいところです。
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