「U18日清食品 東海ブロックリーグ2023」、大会2日目の第1試合。安城学園（愛知県）がウォーミングアップするコートに、激しい衝撃音と大きな歓声が響き渡りました。発信源となったのは3年生の是久春道選手。185cmの上背から豪快なダンクシュートを2本叩き込んだ彼は、試合中も1対1、3ポイントシュート、ディフェンス、リバウンド、リーダーシップなど様々な面で存在感を発揮し、チームの勝利に貢献。筋骨隆々とした体格もあいまって、そのたたずまいは頼もしいの一言でした。

ところが、試合後のインタビュー取材に現れた是久選手は、試合中の存在感はどこへやらというほどに控えめな雰囲気を醸し出していました。

「コートにいる時とは雰囲気が違いますね」と伝えると「よく言われます」と即答。「自分はあんまり器用なプレーヤーじゃないので、しっかり声を出したりガッツを持ってコートに立たないとプレーがうまくいかないんです」と教えてくれました。

仲間内で活発にしゃべるタイプでなければ、負けん気の強いタイプでもない、というのが本人の談。中学時代も目立った実績はありませんが、1年生ながらスタメンとしてインターハイに出場し、国体の県代表メンバーにも選出されています。相澤航コーチは是久選手が持つ大きなポテンシャルを引き上げるために、入学時から『戦い、挑戦するメンタル』を育ててきたようです。

是久選手は言います。「自分は『心が弱い』と言われることが多かったので、気持ちで負けないこと、ミスしても動じないでプレーし続けることを意識していつもプレーしています。相澤先生は入学した時からずっとそう言ってくれていたので、今はミスをしても他のプレーで頑張れば大丈夫、ミスを怖がらずいつもどおり力強いプレーをしよう、と思えるようになっています」

是久選手の精神的な成長は、ダンクにも現れています。新チームの始動時からチャレンジするようになったというアップのダンクは少しずつ成功率が上がり、今は8割くらいの成功率とのこと。6月のインターハイ予選では初めて試合で成功し「あの時はうれしかったです」と表情をほころばせました。

ちなみにアップのダンクで「今日は調子が良い」と判断した是久選手は、この試合中にも速攻からのダンクに挑戦しました。こちらは残念ながら失敗に終わりましたが、相澤コーチはこれを「ナイスチャレンジ！」と笑顔で称え、是久選手は「これからも狙える時は狙っていきたい」とさらなるチャレンジへの意欲を口にしました。

インターハイ予選は惜しくも県3位止まりだったものの、優勝した中部大学第一（愛知県）に9点差まで迫った安城学園。「相手の大きさにびびってしまって、前半で20点差くらいつけられてしまいました。まだまだ弱いメンタルの部分をこの大会で強くしていきたいです」と語る是久選手は、リーグ戦を通じて成長し続けることを誓います。そして、そんなエースの背中に引っ張られるようにして、安城学園は理想に掲げる『うまさよりも強さを押し出して戦うチーム』へ近づいていこうとしています。