東奈那と渡部陽美「試合の中で気づく瞬間が一番面白い」
三田松聖(兵庫県)
三田松聖のバスケは大胆でアグレッシブで、他のチームとは一線を画します。小さな選手もゴール下にどんどん攻め込み、身長のある選手も前からプレッシャーを掛けます。ポジションレスで役割も固定されていない全員バスケは、見る者に鮮烈な印象を与えます。そう伝えると初谷洋志ヘッドコーチは「そう言っていただけるのは本当にうれしい」と会心の笑みを見せました。
「女子バスケには伝統での固定概念から『これはできない』というものがありますが、身体作りからやっていけばできるようになります。何が当たり前なのか、彼女たちのその感覚を変えていくことでバスケは変わっていくし、選手たちの未来を変えたいと思っています」
三田松聖では小さな選手にもゴール下で相手ディフェンスと駆け引きをして得点を奪うスキルを学びます。ジャンプシュートもワンハンドで、両足を揃えて踏み切らなくても流れの中で積極的に狙っていきます。「身体能力が次のプレーを生み出す、そこは時間を掛けてやっています。フィニッシュスキルのバリエーションはものすごく多く、先輩たちから受け継がれているので、その文化ができていると思います」と初谷ヘッドコーチは言います。
渡部陽美選手はこのチームで最も背の高い175cmですが、スモールフォワードのように広いプレーエリアを自由自在に動き、ペリメーターから仕掛ける多彩なスキルを備えています。相手ディフェンスが固まるペイントエリアに思い切りの良いドライブで飛び込んだかと思えばスピンムーブでそのままフィニッシュへ。トップスピードで360度のターンをしたにもかかわらず空中で上体が全くブレることなく、右腕一本で正確なシュートを決めました。
迫力ある動きで、一瞬の思い付きでできるものではありません。このプレーについて問うと渡部選手は「練習でやってきたプレーです。上手く決めることができて良かったです」と、こちらも会心の笑みを見せてくれました。
「私たちは普段から試合を想定して練習をしています。この『U18日清食品 近畿ブロックリーグ2024』は審判もいる公式戦の中で、練習してきたものが本当に出せるかチャレンジする場です」と渡部選手は言います。「初谷コーチはスキルだけじゃなくバスケの構造から教えてくださるのですが、最初は頭が追い付かずにバスケIQを鍛えて自分の中で整理しないと分かりませんでした。常に試合に近い状況で、試合に使いやすいスキルを教えてもらって、そうやって学んだことが試合の中で『あっ、これか!』と思えた時が一番面白いです」
同じく3年生でチームを引っ張る東奈那選手も、日々の練習で鍛えたスキルを駆使して積極的に仕掛ける姿勢が目立ちました。「初谷コーチは研究熱心で私たち一人ひとりのことをよく分かっていて、それぞれの特徴を生かして組み合わせるバスケを教えてくださいます。それで私も味方の特徴を生かしたバスケができるし、逆に味方に私の特徴を生かしてもらっているとも感じます。そうやってディフェンスからオールコートで5人で戦うバスケはすごく楽しいです」
「U18日清食品 近畿ブロックリーグ2024」の初戦では和歌山信愛(和歌山県)に73-59で快勝。東選手は「近畿大会で負けた相手なので、その反省を生かして練習してきました。練習でやってきたことを自分たちらしく出す、みんなで声を掛け合って、自分たちのペースで少しでも長く戦えるように、楽しく挑戦しようと思いました」と語ります。
そして渡部選手と東選手は「全国で戦うためには留学生に負けないためのバスケが必要で、留学生がいないチームの戦い方というものがあると思っています。そのためのバスケを学んでいるので、自分たちに出せる最大限の力を出して良い経験を積みたいです」と言います。その言葉通り、2試合目は強力な留学生プレーヤーを擁する福知山成美(京都府)に95-69の快勝を収めました。自分たちのバスケを楽しみ、自信を強めて、三田松聖は「U18日清食品 近畿ブロックリーグ2024」を戦っていきます。
「U18日清食品ブロックリーグ2024」 会場での観戦情報
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