「U18日清食品ブロックリーグ2025 グループF」を戦う九州学院(熊本県)は日本人選手のみのチームで、田中洋平ヘッドコーチは指導方針をこう説明します。「ウチはサイズがなく、留学生のいるチームには高さで勝てません。ですが、コートの4分の3のエリアでは小さくても足があるほうが有利です。スペースをどう作るか、バスケIQを高めながら組織として戦うことを重視しています」
そうした方針を掲げながら、セットプレーを数多く採り入れた魅力あるオフェンスを披露する九州学院は、9月には県立広島皆実(広島県)を始め中国エリアのチームと5試合を戦い、無傷の5連勝を飾りました。
そして11月23日には同じく5連勝の京都精華学園(京都府)との首位攻防戦に臨みました。勝ったほうが事実上リーグ優勝とあって、両チームとも気合十分。球際で激しい攻防を繰り広げつつ、アップテンポで見応えのある展開が続きます。
63-63で迎えた第4クォーター、勝負強さを見せたのは九州学院でした。キャプテンの山口幹太選手と井上智稀選手が3ポイントシュートを連続で決めて一気に突き放し、92-81で大きな一勝をつかみ取りました。
試合後、井上選手は勝因について「チーム全体で3ポイントシュートの確率が良かったことが大きかったです。途中で逆転されましたが、集中力を切らさずに戦い、逆転で勝つことができました」と会心の笑みを浮かべます。
この試合で相手の留学生オチレベ アレクサンダー選手とマッチアップし、スタッツには残らなくても大きな貢献をしたのが3年生の上村太志選手です。「留学生が自分をマークするのは分かっていたので、外に出て3ポイントシュートを決めることが大事だと思っていました。留学生を外に引っ張り出すことができれば、自分たちのオフェンスの幅が広がるので」と、チームメートを生かすための個人戦術を見事に遂行。前半から3ポイントシュートを沈めることで、得点以上の効果をチームにもたらしました。
後半に京都精華学園がゾーンディフェンスを敷いて守備を固めてきた際には、ナンバープレーで崩しにいきます。井上選手が対角にロブパスを送り、そのボールにコーナーから勢いよく飛び込んだ上村選手がアリウープショットを決めます。このスーパープレーを3回も決めたことで、チームは勢いづきました。
この『飛び道具』について井上選手は、「九州学院のセットプレーやナンバープレーは覚えるが大変ですが、反復練習をして身体に覚え込ませました。今ではようやくアジャストできて、こうやって試合でも決められるのでプレーしていても楽しいです」と笑顔で語ります。
上村選手も九州学院のオフェンスに楽しさを感じています。「自分たちが全国の舞台に立った時、1対1の能力で強豪校に勝つのは難しいと思っています。だからこそナンバープレーなどチームの連携で得点を取る戦術を磨いてきました。チームメートと息を合わせてコンビプレーを決める、その楽しさを感じられています」
そのコンビプレーを決める秘訣を尋ねると、井上選手は「アイコンタクトです」と明かしてくれました。「オフェンスはだいたいアイコンタクトで連携を取っています。こういうシチュエーションだとこうだろ、みたいなのが目を合わせるだけで分かり合えるようになっています」
その境地へと達するまでに、練習で数え切れないほど失敗を重ねてきたと言います。それでもあきらめることなく、粘り強く取り組むことで自分たちのモノにしました。
京都精華学園との激闘を制した翌24日、九州学院は最終戦で県立宗像(福岡県)を102-80で下しました。これにより「U18日清食品ブロックリーグ2025 グループF」で全勝優勝を成し遂げるとともに、「U18日清食品トップリーグ2026入替戦」の出場権を勝ち取りました。
井上選手はとびきりの笑顔でこう言います。「このチームに誇りを持っています。このリーグ戦で優勝することができ、日本人選手だけでも戦えるぞということを証明できたと思います」
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