「U18日清食品ブロックリーグ2025」に初出場する県立佐賀北(佐賀県)の籾井宏一コーチは、初めてのリーグ戦に「この機会をどう活用するか、すごく考えました」と明かします。「公式戦ですから勝ちたいですが、いろんなことを試せる場でもあるので、結果にコミットしすぎるのも違う気がします。様々なチャレンジをやってみて、良いプレーをした選手に次の試合で長い出場時間を与えてチャンスをつかんでもらう、といったことをなるべくやるようにして戦ってきました」
最初の2試合はケガ人が多く連敗となりましたが、その後は3連勝と持ち直します。そしてラスト2試合は阪南大学(大阪府)と瓊浦(長崎県)、いずれも留学生プレーヤーを擁するチームとの試合となりました。「ウチには留学生のいるチームとの対戦がなかなかないので、この機会に思い切って戦ってほしい」と、籾井コーチが阪南大学戦の先発センターに抜擢したのが2年生の王宇柱選手でした。
普段は3年生の渕上皓志郎選手が先発センターで、王選手は2番手です。それでも、阪南大学戦の前日が受験でチームに戻って来たばかりの渕上選手はこの日はプレーせず、2年生に試合を託しました。
いつもの王選手はベンチから出て187cmの高さを生かして攻守にハッスルしますが、今回は先発で役割が変わります。「いつもは皓志郎さんが先発で流れを作ってくれて、僕は繋いでいく感じです。先発のチャンスなので気合いを入れつつ、でもいつも通りのプレーをしようと心掛けました」
マッチアップする相手は身長200cmのイベアブチ エマニュエル チジオケ選手。こちらも1年生で、先発のチャンスを得て奮起しており、2人はペイントエリアで有利なポジションを取ろうと激しく身体をぶつけ合います。どちらがゴール下を支配するか、絶対に負けられない戦いがそこにはありました。
ポジションを争うぶつかり合いでは高さと体格で上回るチジオケ選手が有利ですが、王選手はそこで踏ん張りつつ、ストレッチして外からのシュートを狙ったり、ピック&ロールで味方のチャンスを作り出したりと、これまで練習してきた様々なプレーで対抗します。第2クォーターにはスクリーンを掛けてからのダイブで味方からのパスを引き出し、鮮やかなシュートを決めました。
しかし、その直後に王選手は立て続けにファウルを取られます。会心のプレーで勢いに乗ったはずだ、ベンチに下がることを余儀なくされました。「マッチアップする相手が強烈だったので、激しいプレーが必要でした。ファウルにならないラインを狙って、簡単にボールを入れさせないことを意識しました。激しくプレーしても汚いプレーはしない。そういうアピールも必要だったと思います」
王選手がベンチに下がった後、その代役を務めたのは同じ2年生の石井宏汰選手でした。チームが劣勢を強いられる中、王選手は自分にできることを探します。「スターティングメンバーのチャンスなのに下がって悔しかったですが、同級生の宏汰が頑張っているのを見て、悔しがっているのではなく自分にできることをしようと思って、ベンチからどんなアドバイスができるかを考えて声を出しました」
試合は79-97で敗れました。王選手は良いプレーをしながらもファウルトラブルでリズムに乗り切れませんでしたが、貴重な学びもありました。「相手の留学生を抑えるのに必死で、目の前にリバウンドがこぼれて来たのに飛び込めないシーンが何度かありました。自分で取れなくてもティップで仲間に繋ぐなど、もっとボールへの執着心を出したいです」
佐賀北は基本的にベンチ入りの選手全員を使うチームで、選手たちには強い連帯感があると王選手は言います。「誰にでもチャンスがあって、みんなで頑張るチームです。そこで誰かが長所を発揮すればプレータイムが増えて、それを周りが応援します。今もこうやってチャンスがもらえて、みんなで頑張れるのは、やっていてすごく楽しいです」
チームの結束を重視しつつ、多くの選手にチャンスを与えることで健全な競争を生み出す。狙い通りに成長するチームを前に、籾井コーチは笑顔でこう語りました。「ウチは『能力より労力』なんです」
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